活動

CCU患者データ解析より

76回日本循環器学会学術集会報告

<東京都CCUネットワークデータ集計結果の解析からのメッセージ>

疾患別解析班よりお知らせします。

1.急性心筋梗塞

2.狭心症

3.急性心不全

4.不整脈

5.急性肺塞栓症

6.急性心筋炎

7.たこつぼ心筋症

8.ショック・心停止

 

 

 

 

 

1.「急性心筋梗塞」班

演題名

(英文) Emergency Transport Detail of Patients with Acute Myocardial Infarction in Tokyo Metropolitan Area

(和文) 東京都における急性心筋梗塞患者の緊急搬送の実態

解析班

急性心筋梗塞班

発表演者

高山守正

 

メッセージ

 

1.東京都CCUネットワーク施設に2009年に入院した急性心筋梗塞2094例を解析。

  80.2%が救急車にて搬送されCCUに入院、19.8%が自己選択交通で受診した。 

2.心不全・ショック合併の重症患者は救急車搬送され、救急車群の方が死亡率が高い。

3.発症-病着時間は救急車搬送がはるかに短い。

  中間値 1時間55 vs 5時間33,   平均値 4時間5 vs 6時間5

4.緊急CAGは両群の90%に実施されたが、 緊急PCIは自己選択交通群の方が

  有意に低率(70% vs 60%)で、遅れがPCI適応外となっていた。

5.自覚症状の種類、近医受診の率に両群で差はないが、自己選択交通群は66%が近医受診後も救急車搬送が選択されていなかった。

★急性心筋梗塞への原因治療の迅速な実施へは、さらに都民への教育とともに、実地医療機関医師への救急搬送・CCU選択を強く勧める活動が重要と考えられる。

 

 

2.「狭心症」班-1

 

演題名

(英文) Age-dependent efficacy of emeregent revascularization in the Non-ST elevation myocardial infarction-Analaysis based on Tokyo CCU Netework Cohort in Japan-

 

(和文) ST上昇急性冠症候群に対する緊急血行再建の年齢別の効果

解析班

狭心症班

発表演者

藤本先生

 

メッセージ

 

ST上昇急性心筋梗塞875例を75歳未満の535例と75歳以上の340例で比較すると、75歳以上では男性が低率(84.5%60.6%)、Killip 3-4の心不全合併が高率(8.4%17.9% )24間以内の冠動脈造影(83.7%68.2%)、血行再建が低率(53.8%42.9%)であり、死亡率は3.7%12.1%で有意に高率であった。

175歳以上では30日死亡率は緊急血行再建施行群の方が有意に低率であった。この傾向は年齢が高くなるほど顕著であった(図)

275歳以上例における多変量解析による予後規定因子は、緊急血行再建の施行有無、合併症の有無、心不全の有無であり。逆に、75歳以上で血行再建未施行例は重症の心不全合併が高率であった。

★高齢者は患者背景がより不良であり、血行再建のリスクも高いと想定されるが積極的な血行再建施行は予後を改善する可能性がある

 

 

 

3.「狭心症」班-2 

演題名

(英文) Where is the best timing to perform PCI/CABG procedure for patients with Non-STEMI ? –From Tokyo CCU network database-

 

(和文) ST上昇急性冠症候群における適切な血行再建施行時期はいつか?

解析班

狭心症班

発表演者

小宮山 先生

 

メッセージ

 

ST上昇急性冠症候群に対する血行再建の施行時期と院内予後の関係について検討を行い以下の結果を得た。

  • 対象はCCUに入院し血行再建が施行された不安定狭心症、非ST急性心筋梗塞の2234例。内訳はPCI 1815例(81.2%)、CABG419 例(18.8%)であった。
  • 血行再建の施行時期によって緊急、24間以内、27日、7日以降の4群に分類した。PCIは緊急での施行が主(1049例、57.8%)、ついで27(420)24間以内(235)7日以降(111)の順。CABG7日以降が主で(184例、43.9%)、27日(106例)、緊急(80例)、<24間以内(49例)の順であった
  • 結果を図に示す。

★血行再建施行時期決定にはリスクアセスメントが重要であり、補完すべき薬物療法の重要性が示唆される。なお、患者背景のmatchingされていない点が本研究の限界である。

 

 

 

4.「急性心不全」班

 

演題名

(英文) In-hospital Mortality According to Severity of Heart Failure in Patients who were Suffered from Acute Myocardial Infarction or not

(和文) 急性心筋梗塞合併例または非合併例での、心不全の重症度に伴う院内死亡率

解析班

心不全班

発表演者

宮本 貴庸

 

メッセージ

 

1.東京都CCUネットワーク施設に2005-2009年に入院した急性心不全23,840 例、急性心筋梗塞22,955例から年齢、性別、院内予後、Killip分類が特定できた急性心筋梗塞7,784例、急性心不全8,019例を解析。

2.対象患者での急性心筋梗塞8.0%、急性心不全8.4%の院内死亡率だった。

3.急性心不全例では急性心筋梗塞例に比べて、女性の割合が多く、高齢者で、高血圧であり、経皮的酸素飽和度が低かった。

4.急性心筋梗塞症例では、心不全非合併例の比率が高く、心不全非合併例は院内死亡率が非常に低い。急性心不全例では、呼吸不全例の比率が高く、死亡数が最も多い。

5.歴史的にみれば、急性心筋梗塞例での院内死亡率の改善は、重症心不全合併例の減少(早期入院、搬送、知識普及による)と冠動脈再環流療法の進歩(主に手技やステントなどの使用器具の改善による)によると考えられた。

6.同様な考察より、急性心不全の院内予後の改善には重症心不全合併する前の入院や搬送と侵襲の少ない呼吸補助法(NPPV)などの普及などが必要と考えた。

★急性心不全の、急性期治療効果は重症例であっても非常に高い。今後は、重症化する前の早期の受診を促す施策が必要と考えられる。

 

 

 

 

 5.急性心筋炎

演題名

(英文) The efficacy of steroid and γ globulin for the fulminant myocarditis : Results from Tokyo CCU network database

(和文) 劇症型新禁煙に対するステロイドとγグロブリン療法の効果:東京CCUネットワークデータベースからの解析

解析班

心筋炎班

発表演者

佐藤康弘

 

メッセージ

 

東京CCUネットワークのデータベースの中で心筋炎は、毎年70-80人程度の登録であり、比較的まれな疾患ではあるが、劇症例では予後不良であることが知られている。単一病院では劇症例の症例数は少なく、心筋炎解析班では2007-2009年の心筋炎症例(138例)の詳細調査を行い、昨年の日本循環器学会総会、アメリカ心臓病学会で発表した。

入院時の臨床指標で、劇症化の予後予測となった項目は、単変量解析では、収縮期血圧、心電図のQRS幅、CK-MBBNP、駆出率であったが、多変量解析では血圧とQRS幅のみであった。この、2つの予後予測因子から両指標のカットオフ値を求めたところ、血圧は101mmHg 、心電図は120ミリ秒であった。

即ち、入院時の血圧が101mmHg未満かつQRS幅が120ミリ秒以上の患者群(group1)の院内死亡率は29%であったのに対し、どちらかが陽性の群(group2)の死亡率は17%、両方とも陰性の場合の死亡率(group3) 2%(p<0.01)であった。

心筋炎の治療は基本的には保存的な治療であり、血行動態の破綻しているような重症例で急性期を脱するまでPCPSIABPなどの循環補助がClass1とされているが、ステロイドや大量γグロブリン(IGG)が有用との論文もあるが、一定の見解がいまだない。

今回、重症例におけるステロイドおよびIGGの効果を後ろ向き検討したところ、80%の症例にどちらかあるいは両方が使用されていた。ステロイドとIGG併用例、ステロイド単独、IGG単独、二剤とも使用されなかった患者の死亡率はそれぞれ、45%、25%、0%、27%であった。IGG単独とステロイド使用例の死亡率(41%)には有意差が認められた。

結論:重症心筋炎例におけるステロイド治療により死亡率の改善は認められなかった。IGG単独投与例はステロイド単独およびステロイド+IGG併用例よりも有意に死亡率が低く、今後、前向き試験による検討が期待される。

 

 

 

 

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